救急医療を語る際、華々しい高度医療のイメージがある三次救急に注目が集まりがちですが、実際に日本の救急搬送の大部分を支えているのは、二次救急と呼ばれる地域の病院群です。二次救急の役割は極めて多岐にわたり、地域医療における「よろず引き受け所」としての側面を持っています。突然の激しい発熱、転倒による大腿骨骨折、重度の肺炎、意識は保たれているものの治療が必要な心疾患など、入院を要する中等症の患者を昼夜問わず受け入れるのが、二次救急の日常です。二次救急病院がなければ、三次救急のセンターは即座にパンクし、地域の一次医療機関である診療所も、入院が必要な患者の送り先に窮することになります。このように、二次救急は医療の「流通」における中心的なハブ機能を果たしています。しかし、その現場は今、深刻な限界に直面しています。三次救急のような潤沢な公的補助金や専用のスタッフ配置が約束されているわけではなく、多くの二次救急病院は、一般診療と救急医療を同じ医師や看護師が兼務しながら回しています。日中の外来診察を終えた医師が、そのまま夜間の救急当直に入り、運び込まれる患者の診断と入院処置を行い、翌朝にはまた通常通りの勤務に入る。このような過酷な勤務実態が、二次救急の現場を疲弊させています。また、二次救急と三次救急の違いとして、対応の「完結性」の問題もあります。二次救急病院に搬送されたものの、検査の結果、専門外の特殊な手術が必要だと判明した場合、そこから三次救急への転送交渉を行わなければなりません。この「受け入れ先が見つからない」という不安と戦いながら、目の前の患者の容態を維持し続けるのが二次救急の医師たちの苦悩です。近年、働き方改革が進む中で、こうした二次救急の献身的な体制をどう持続させていくかが、国全体の大きな課題となっています。二次救急の役割を維持するためには、特定の病院に負担を強いるのではなく、地域の病院同士が連携を深める「地域医療構想」の推進が不可欠です。私たち住民にできることは、まず二次救急という存在がどれほど貴重なものかを認識することです。自分たちの住む町に、夜中でも入院させてくれる病院がある。その安心感は、決して当たり前のものではなく、現場のスタッフの並外れた努力の上に成り立っているのです。二次救急と三次救急の適切な使い分け、そして二次救急への感謝と支援の意識こそが、崩壊の危機にある救急現場を救う唯一の希望となるでしょう。
地域医療の要となる二次救急の役割と現場が直面する限界