都内のIT企業に勤める四十代の佐藤さんは、慢性的な肩の痛みと重だるさに一年以上悩まされていました。デスクワークが中心の生活であり、最初は典型的な肩こりだと思い込んで、整体やマッサージに定期的に通っていました。しかし、一時的には楽になるものの、数日経つと再び鈍い痛みが戻り、次第に左腕に軽いしびれを感じるようになりました。佐藤さんは「肩が痛い 何科」と検索し、最初は一般内科を受診しましたが、そこで血液検査や心電図を撮っても心臓や血管に異常は見当たりませんでした。医師から「肩の関節の問題かもしれない」と勧められ、次に整形外科を受診したことが転機となりました。整形外科の医師は、佐藤さんの肩の可動域だけでなく、首の動きを詳細にチェックしました。レントゲンとMRIを撮影した結果、判明したのは肩そのものの異常ではなく、頚椎症性神経根症という、首の骨の変形によって神経が圧迫され、その痛みが肩に放散しているという事実でした。佐藤さんはこれまで肩を揉みほぐすことばかりに集中していましたが、本当の原因は首にあったのです。この事例が示唆するのは、肩が痛いからといって必ずしも肩の関節に原因があるとは限らないという現実です。整形外科では、このような神経の通り道を考慮した全身的な視点での診察が可能です。佐藤さんはその後、首に負担をかけない作業姿勢の指導を受け、専用の枕の使用とリハビリを継続することで、長年苦しんだ肩の痛みから解放されました。もし彼がそのまま整体だけで済ませていたら、神経の圧迫がさらに進み、手に麻痺が出る事態になっていたかもしれません。肩の痛みは、体の一部が発している複雑な暗号のようなものです。その暗号を正しく解読するためには、専門的な医療機器と診断知識を持つ医療機関への受診が不可欠です。佐藤さんのように、原因不明の長引く痛みを抱えている場合は、診療科を絞り込む前に、まず運動器の専門家である整形外科を受診し、解剖学的な裏付けを取ることが、迷走を終わらせるための鍵となるのです。
長引く肩の違和感を放置せず原因を突き止めたある男性の事例