肩の痛みを訴えて外来を訪れる患者さんの中には、ただの五十肩だと思い込み、かなり症状が進行してから受診される方が少なくありません。しかし、肩という部位は、脊髄から出た神経が複雑に入り組み、さらに心臓や横隔膜に近い場所にあるため、痛みの出方一つで多くの疾患を鑑別できる重要なポイントでもあります。何科を受診すべきかという問いに対して、基本は整形外科ですが、医師の視点から特に注意してほしい「レッドフラッグ(危険信号)」がいくつかあります。まず、肩を動かしても痛みに変化がなく、安静にしていてもズキズキと深く痛む場合は、関節の炎症だけでなく、内臓や骨そのものの深刻な疾患が隠れていることがあります。例えば、肺癌が肺の先端部分にできた場合、それが神経を刺激して肩の痛みとして現れることがあり、これをパンコースト腫瘍と呼びます。この場合は呼吸器内科や外科の領域となります。また、胆嚢炎や膵炎などの消化器疾患が、神経の伝達経路の関係で右肩の痛みとして感じられることもあります。一方で、整形外科的な疾患であっても、五十肩だと思っていたものが実は腱板断裂であったというケースは非常に多く、この二つは治療法が全く異なります。断裂を見逃して無理なストレッチを続けると、傷口が広がり、最終的に手術が必要になるほど悪化することもあります。専門医のアドバイスとしては、まず「痛みのきっかけ」と「痛みが強くなる動作」を整理して伝えてください。重いものを持った時に痛めたのか、それとも何もしないのに痛み出したのか、これらの情報は診断の大きな手がかりになります。また、糖尿病などの持病がある方は、肩の関節が固まりやすいという特徴があるため、内科との連携も視野に入れる必要があります。肩が痛いという症状を放置することは、肩の可動域を永久に制限してしまうリスクを伴います。たかが肩の痛みと侮らず、まずは整形外科で骨や腱に異常がないかを確認し、そこから必要に応じて他科への紹介を仰ぐというステップが、最も安全で確実な健康管理のノウハウなのです。
肩の痛みから隠れた病気を見逃さないための専門医の助言