それは突然の出来事でした。深夜に喉をナイフで切り裂かれるような激痛で目が覚め、翌朝には熱が三十九度まで跳ね上がりました。最初はインフルエンザか新型コロナを疑いましたが、検査はどちらも陰性。何が起きているのか分からないまま、二日目の夜を迎えました。その時、ふと鏡を見ると、首から胸にかけて見たこともないような細かく赤い発疹が広がっていることに気づきました。翌朝になると、その赤みは爆発的に広がり、お腹、背中、さらには太ももや腕の内側にまで及んでいました。鏡に映る自分の姿は、まるで全身を赤いインクで塗り潰したかのようで、あまりの異様さに恐怖すら感じました。発疹の一つ一つは針の先ほどのごく小さな点なのですが、それが数え切れないほど密集しているため、遠目には皮膚全体が真っ赤に腫れているように見えます。触ってみると、これまでに経験したことのないザラザラとした質感があり、まるでおろし金で擦られた後のような感触でした。同時に襲ってきたのが、全身を這い回るようなしつこい痒みです。喉の痛みで飲み込むこともままならず、全身は痒みと火照りで休まる暇がありません。再受診した病院で、喉の検査の結果「溶連菌感染症」と診断された時、初めて私は自分の敵の正体を知りました。医師からは、この全身の発疹は毒素に対するアレルギー反応のようなもので、薬を飲めば数日で落ち着くと言われ、藁にもすがる思いで抗菌薬を服用しました。薬の効果は驚くほど速く、服用から一日経つ頃には熱が下がり始め、喉の痛みも峠を越えました。しかし、全身の赤みとザラザラした質感、そして痒みはそれから三日間ほど私を苦しめ続けました。保冷剤で全身を冷やしながら、痒みに耐えて過ごしたあの夜の辛さは、今でも思い出すだけで肌がむず痒くなるほどです。四日目あたりから、あんなに真っ赤だった皮膚が少しずつ元の色に戻り始めましたが、今度は皮膚全体が乾燥して粉を吹いたようになり、服を脱ぐたびに白い皮膚の破片が舞うという不気味な現象が起きました。さらに一週間後、指先から皮がベロリと剥けてきたとき、溶連菌という細菌がいかに私の体全体を侵略していたのかを思い知らされました。この闘病を通して学んだのは、溶連菌は単なる喉の病気ではなく、文字通り「全身疾患」なのだということです。全身を染め上げるあの赤い発疹は、細菌が放つ目に見えない毒素の視覚化であり、それに対抗しようとする自分の体の叫びでもありました。もし、あの日あの時、鏡を見て異変に気づかなかったら、私は今頃どうなっていただろうかと、回復した今でも時折考えます。全身の発疹という強烈なサインを無視せず、すぐに専門医の診断を仰いだことが、私の回復への分かれ道だったと確信しています。
全身が真っ赤になった溶連菌感染症の闘病日記