DVの渦中にいる方が病院を受診しようと決意した際、安全を確保しながら適切な診療科に辿り着くためにはいくつかの具体的な手順を知っておく必要があります。まず、受診先を選ぶ際の基準として、できれば自宅から少し離れた、加害者が立ち寄る可能性の低い中核病院や総合病院を選ぶことが推奨されます。総合病院であれば、整形外科、外科、婦人科、内科などが揃っているため、一回の受診で全身の診察を受けることができ、かつDV支援に慣れたソーシャルワーカーが在籍している確率が高いからです。受診する科の選び方については、出血や明らかな腫れがあるなら外科、骨の痛みがあるなら整形外科、性被害や腹痛があるなら産婦人科、目や耳に違和感があるなら眼科や耳鼻科、そして明確な怪我がなくても動悸や不眠があるなら心療内科というように、自分の症状を客観的に見つめて選択します。病院の受付では、もし加害者が近くにいる可能性があるなら「転んだ」「ぶつけた」と言わざるを得ないかもしれませんが、診察室に入り医師と二人きりになった瞬間、必ず「パートナーからの暴力です」と真実を伝えてください。多くの病院では、看護師が予診の段階で「家族に知られたくない事情はありますか」といった質問をしてくれることがあります。ここで正直に話すことが、後のすべての支援の入り口となります。次に、診断書の作成を依頼する際の手順です。診断書には「全治何週間」といった期間だけでなく、受傷部位の写真撮影も併せて依頼してください。病院で撮影された写真は、医学的な記録として非常に強力な証拠になります。また、診察代の支払いについても、加害者と共有している健康保険証を使いたくない場合は、自費診療(全額負担)での支払いを検討するか、ソーシャルワーカーに公費負担制度や今後の保険手続きについて相談することができます。受診後の注意点として、領収書や処方箋、診断書などの書類を不用意に自宅に持ち帰り、加害者に見つからないようにしなければなりません。病院によっては、これらの書類を一時的に預かってくれたり、信頼できる友人宅や実家へ送付する手配を助けてくれたりすることもあります。病院へ行くという行為は、加害者から見れば「反抗」や「逃走の準備」と捉えられる恐れがあるため、受診すること自体を内密に進めることが安全確保の基本です。しかし、一度病院に入ってしまえば、そこは公的な守りがある空間です。診察の結果、入院が必要になれば、それが物理的な避難(一時保護)の代わりになることさえあります。医療機関はあなたの味方です。適切な診療科を選び、勇気を持って真実を話すことで、閉ざされていた未来への扉が少しずつ開き始めます。