医療Q&Aや掲示板、専門家とのチャット形式コラム

2025年8月
  • 整形外科か整骨院か?右肩の痛み、正しい相談先の見極め方

    医療

    右肩に痛みを感じた時、近所にある「整形外科」と「整骨院(接骨院)」、どちらに行けば良いのか、その違いがわからずに悩む方は少なくありません。どちらも体の痛みを扱う場所として知られていますが、その役割と資格、そしてできることには、天と地ほどの明確な違いがあります。この違いを正しく理解しないまま、安易に相談先を選ぶと、症状が悪化したり、回復が遅れたりする可能性もあります。まず、「整形外科」は、医師国家試験に合格した「医師(整形外科医)」が、診察と治療を行う、れっきとした「医療機関」です。医師は、レントゲンやMRI、超音波といった画像検査や、血液検査などを用いて、痛みの原因を医学的に「診断」する権限を持っています。そして、その診断に基づいて、投薬(痛み止めや湿布)、注射、手術、そして理学療法士によるリハビリテーションといった、あらゆる「治療行為」を行うことができます。五十肩、腱板断裂、石灰性腱板炎、変形性肩関節症といった、肩の痛みの原因となる、全ての病気の診断と治療が可能です。一方、「整骨院(接骨院)」で施術を行うのは、「柔道整復師」という国家資格者です。柔道整復師は、医師ではありません。そのため、レントゲンなどの画像検査や、病名の「診断」、そして投薬や注射、手術といった「医療行為」を行うことは、法律で固く禁じられています。彼らの専門分野は、あくまで、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷(肉離れ)といった「急性のケガ」に対する、応急的な処置や、その後のリハビリテーション(後療法)です。したがって、あなたの右肩の痛みが、転倒やスポーツなど、はっきりとしたケガが原因であれば、整骨院で応急処置を受けることも一つの選択肢です。しかし、いつからともなく痛み出した、加齢によるものかもしれない、腕が上がらないといった、原因がはっきりしない慢性的な痛みの場合、整骨院で健康保険を使って施術を受けることは、原則として認められていません。まずは必ず「整形外科」を受診し、医師による正確な診断を受けること。これが、あらゆる体の痛みに対する、絶対的な鉄則です。その上で、もし医師から、筋肉の緊張をほぐす目的などで、整骨院の利用を勧められた場合に、初めて検討するのが、最も安全で正しい順序なのです。

  • 血糖値を下げる運動習慣。無理なく続けるコツ

    知識

    糖尿病予備軍と診断された方が、食事改善と共にもう一つ取り組むべき重要な柱が「運動」です。運動には、血糖値を下げるための二つの大きな効果があります。一つは、運動すること自体が血液中のブドウ糖をエネルギーとして消費し、直接的に血糖値を下げる効果。もう一つは、運動を継続することで筋肉量が増え、インスリンの働きが良くなる、つまり血糖値が上がりにくい体質へと改善していく効果です。しかし、そうは言っても、これまで運動習慣のなかった人が急に運動を始めるのはハードルが高いと感じるかもしれません。大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。無理なく、そして楽しく続けられることを見つけるのが、予備軍脱出への一番の近道です。最も手軽で効果的なのが「ウォーキング」です。特別な道具も場所も必要なく、思い立ったらいつでも始められます。目標は一日合計で30分程度。一度にまとめて歩けなくても、10分を3回に分けるなど、こま切れでも効果はあります。特に、食後30分から1時間後のタイミングで歩くと、食事で上がった血糖値を効率良く下げることができるためおすすめです。通勤時に一駅手前で降りて歩く、昼休みに会社の周りを散歩するなど、日常生活の中に組み込む工夫をしてみましょう。ウォーキングに慣れてきたら、少し早歩きを取り入れたり、軽いジョギングやサイクリングに挑戦したりするのも良いでしょう。また、有酸素運動と合わせて、自宅でできる簡単な筋力トレーニング、例えばスクワットなどを加えるとさらに効果的です。筋肉は体の中で最も多くのブドウ糖を消費する場所だからです。何よりも重要なのは「継続」です。今日は疲れているから休む、雨が降っているからやらない、と決めても構いません。三日坊主になっても、また四日目から始めれば良いのです。そのくらいの気楽さで、運動を生活の一部にしていくことが、血糖値の改善、そして未来の健康へと繋がっていきます。

  • 痔の三大タイプ「いぼ痔」「切れ痔」「痔瘻」とは

    医療

    「痔」と一言で言っても、その種類は一つではありません。主に三つのタイプに分けられ、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。ご自身の症状がどのタイプに近いかを知ることは、病気を正しく理解する上で役立ちます。1.痔核(じかく)〜通称:いぼ痔〜これは、痔の中で最も頻度が高く、全体の約半数を占めるタイプです。肛門の血行が悪くなる「うっ血」が原因で、静脈の一部がこぶ状に腫れ上がったものです。できる場所によって、二種類に分けられます。肛門の内側(直腸側)にできるのが「内痔核」です。初期の段階では痛みはなく、排便時に真っ赤な血がポタポタと垂れたり、シャーっと噴き出したりする「出血」が主な症状です。進行すると、排便時にいぼが肛門の外に飛び出す「脱出」が起こるようになります。一方、肛門の外側にできるのが「外痔核」です。普段は症状がないことが多いですが、過労や飲酒などで血流が悪くなると、内部に血豆(血栓)ができて急に腫れ上がり、「血栓性外痔核」として激しい痛みを引き起こすことがあります。2.裂肛(れっこう)〜通称:切れ痔〜硬い便が通過する際に、肛門の出口付近の皮膚が切れてしまう状態です。特に、女性に多く見られます。排便時に、「ズキッ」「ピリッ」とした、紙で切ったような鋭い痛みが走り、トイレットペーパーに少量の血が付着するのが特徴です。痛みを恐れて排便を我慢すると、さらに便が硬くなり、悪循環に陥りがちです。慢性化すると、傷が深くなって潰瘍になったり、肛門が狭くなったりすることもあります。3.痔瘻(じろう)〜通称:あな痔〜これは、男性に多く見られる、少し特殊なタイプの痔です。肛門の内部にある小さなくぼみ(肛門陰窩)から細菌が侵入し、肛門の周りの組織に膿のトンネル(瘻管)ができてしまう病気です。まず、前段階として、肛門の周りが赤く腫れて激しく痛む「肛門周囲膿瘍」が起こります。これを切開して膿を出すか、自然に破れると、一旦症状は楽になりますが、その後、膿の通り道が残ってしまい、そこから常に膿や分泌物が出続けるようになります。痔瘻は、市販薬や塗り薬で治ることはなく、根本的な治療には手術が必要です。放置すると、トンネルが枝分かれして複雑化したり、稀にがん化したりすることもあるため、早期の治療が重要です。

  • 糖尿病予備軍を放置する本当の怖さとは

    医療

    「糖尿病予備軍」という言葉は、どこか少し安心感を与えてしまう響きがあるかもしれません。「まだ病気じゃない」「本格的な糖尿病ではないのだから大丈夫」と、つい対策を後回しにしてしまう人もいます。しかし、それは非常に危険な考え方です。糖尿病予備軍は、体が発している最後の警告であり、これを無視して放置することは、自ら深刻な健康リスクを招き入れることに他なりません。予備軍の状態を放置した場合、その先にあるのは本格的な「2型糖尿病」への移行です。一度糖尿病と診断されると、食事や運動療法に加えて、薬物療法が必要になるケースがほとんどです。血糖値をコントロールするための薬を毎日飲み続けなければならず、人によってはインスリン注射が欠かせない生活になります。これは、経済的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいものです。しかし、本当に恐ろしいのは、糖尿病そのものよりも、それに伴って引き起こされる「合併症」です。高血糖の状態が長く続くと、全身の血管がダメージを受け、様々な臓器に深刻な障害が現れます。代表的な合併症には、失明の原因となる「糖尿病網膜症」、人工透析が必要になる「糖尿病腎症」、足の切断にも繋がりかねない「糖尿病神経障害」の三つがあります。これらは生活の質を著しく低下させるだけでなく、命に関わることもあります。さらに、高血糖は動脈硬化を促進するため、心筋梗塞や脳梗塞といった、突然死のリスクがある病気の発症率も格段に高めます。糖尿病予備軍の段階で生活習慣を改善し、血糖値を正常に戻すことができれば、これらの恐ろしい合併症のリスクを大幅に減らすことができます。予備軍という言葉の裏に隠された本当の怖さを理解し、先延ばしにせず、今日から行動を起こすことが、あなたの未来の健康を守るために何よりも重要なのです。

  • 女性に痔が多いのはなぜ?妊娠・出産と便秘が鍵

    医療

    統計的に、痔に悩む人の割合は、男性よりも女性の方が多いと言われています。特に、若い世代ではその差が顕著です。なぜ、女性は痔になりやすいのでしょうか。その背景には、女性特有のライフステージの変化と、身体的な特徴が深く関わっています。女性が痔を発症する最大のきっかけとなるのが、「妊娠・出産」です。妊娠中は、女性の体に劇的な変化が起こります。まず、大きくなった子宮が、骨盤内の血管を圧迫し、肛門周辺の血流が悪くなります(うっ血)。これにより、いぼ痔(痔核)が非常にできやすい状態になります。また、妊娠中は、ホルモンの影響や、大きくなった子宮による腸の圧迫で、「便秘」になりやすくなります。硬い便を排出しようと強くいきむことは、肛門に大きな負担をかけ、切れ痔(裂肛)や、いぼ痔の脱出を引き起こす直接的な原因となります。そして、出産時には、分娩時の強烈ないきみによって、肛門に最大級の圧力がかかります。この時に、一気にいぼ痔が悪化したり、肛門が切れてしまったりする女性は、決して少なくありません。産後も、授乳による水分不足や、会陰切開の傷の痛みで排便を我慢してしまうことから、便秘が悪化し、痔の症状が長引くことがあります。また、妊娠・出産を経験していなくても、女性は男性に比べて、元々「便秘」になりやすい傾向があります。これは、月経前に分泌される黄体ホルモンが、腸の動きを鈍くさせる作用を持つためです。ダイエットによる食事量の減少や、外出先でトイレを我慢しがちな習慣も、便秘を助長し、痔のリスクを高めます。さらに、体の「冷え」も、肛門周辺の血行を悪化させ、痔の誘因となります。筋肉量が少なく、冷え性の女性が多いことも、痔になりやすい一因と言えるでしょう。このように、女性の痔は、ホルモンバランスの変化、便秘、そして妊娠・出産という、女性ならではの要因が複雑に絡み合って発症します。恥ずかしがらずに、早めに肛門科を受診し、適切なケアを受けることが、快適な毎日を取り戻すための第一歩です。

  • お尻の悩み「痔」、受診すべきは一体、何科?

    医療

    お尻からの出血、排便時の痛み、あるいは、肛門のあたりにできた、気になるできもの。これらの症状は、多くの人が一度は経験するかもしれない「痔」の典型的なサインです。しかし、その悩みのデリケートさゆえに、「病院へ行くのは恥ずかしい」「どの診療科へ行けば良いのかわからない」と、一人で抱え込み、受診をためらってしまう方が非常に多いのが実情です。この、誰にも相談しにくいお尻の悩み。勇気を出して病院へ行こうと決めた時、最初に選ぶべき専門の診療科は、「肛門科(こうもんか)」あるいは「肛門外科」です。肛門科は、その名の通り、肛門とその周辺の病気(痔核、裂肛、痔瘻など)を専門に診断・治療するエキスパートです。肛門科医は、肛門の構造や機能について深い知識を持ち、専用の器具(肛門鏡など)を用いて、患部の状態を正確に診察します。そして、症状の程度や種類に応じて、薬物療法(軟膏、坐薬、内服薬)、生活習慣の指導、あるいは日帰り手術や入院手術といった、幅広い治療の選択肢の中から、患者さん一人ひとりに最も適した方法を提案してくれます。しかし、近所に「肛門科」という看板を掲げたクリニックがない場合も多いでしょう。その場合は、「消化器外科」あるいは「一般外科」を受診するのが一般的です。これらの外科でも、多くの場合、痔の診察や治療を行っています。また、消化器系の病気を広く扱う「消化器内科」や「胃腸科」でも、初期の相談や、比較的軽い痔の薬物療法に対応してくれることがあります。重要なのは、自己判断で市販薬を使い続けたり、症状を放置したりしないことです。お尻からの出血は、痔だけでなく、大腸がんや炎症性腸疾患といった、より深刻な病気のサインである可能性も否定できません。恥ずかしさを乗り越えて、専門家である医師に相談すること。それが、つらい症状から解放され、大きな病気を見逃さないための、最も確実で、賢明な第一歩となるのです。