喉に何かが詰まったような、あるいは締め付けられるような不快な感覚が続いているにもかかわらず、耳鼻咽喉科や消化器内科で検査をしても全く異常が見つからない。そんな経験はありませんか。原因不明の喉の違和感に悩む人の中には、「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」を発症しているケースが少なくありません。この症状は、かつては「ヒステリー球」とも呼ばれていました。その名の通り、器質的な問題、つまり喉に物理的な異常があるわけではなく、主に精神的なストレスや不安、自律神経の乱れが原因で引き起こされると考えられています。私たちの喉や食道の筋肉は、自律神経によってコントロールされています。強いストレスや過労、環境の変化などによって交感神経が過剰に優位になると、これらの筋肉が異常に緊張し、収縮します。この筋肉の緊張が、あたかも喉に球のような異物があるかのように感じられるのです。症状の現れ方は人それぞれで、「何かが張り付いている」「膜が張った感じ」「圧迫感がある」などと表現されます。特徴的なのは、食事の際には症状が気にならなくなったり、何かに集中していると忘れていたりする一方で、一人で静かにしている時や不安を感じた時に症状が強くなる傾向があることです。咽喉頭異常感症の診断は、他の病気の可能性を全て排除した上で行われる「除外診断」が基本です。まずは耳鼻咽喉科でファイバースコープ検査などを受け、ポリープやがん、炎症といった器質的な疾患がないことを確認することが大前提となります。その上で、症状と精神的な背景を総合的に判断し、診断に至ります。治療としては、まずストレスが原因であることを自覚し、安心することが第一歩です。生活習慣を見直し、十分な休息や睡眠、適度な運動を心がけることが大切です。症状が強い場合には、精神的な緊張を和らげるための抗不安薬や、自律神経のバランスを整える薬、あるいは漢方薬などが処方されることもあります。もしあなたが原因不明の喉の違和感に悩んでいるなら、一度、心と体の声に耳を傾けてみる必要があるかもしれません。