右肩が痛い時、ほとんどの人は、肩そのものの筋肉や骨、腱に問題があると考え、整形外科を受診します。それは、多くの場合、正しい判断です。しかし、ごく稀に、その痛みの原因が、肩から遠く離れた「内臓の病気」にあることがあります。これを「関連痛(かんれんつう)」と呼びます。内臓の痛みを伝える神経と、肩の皮膚の感覚を伝える神経が、脊髄の同じレベルで交錯しているために、脳が「痛みの発生源」を勘違いしてしまうことで起こる現象です。もし、肩を動かしても痛みは変わらないのに、安静にしていても、右肩や、肩甲骨のあたりに、鈍く、うずくような痛みが続く場合は、内臓からのSOSサインである可能性も、頭の片隅に入れておく必要があります。右肩に関連痛を引き起こす代表的な内臓疾患は、「肝臓」や「胆のう」の病気です。肝臓や胆のうは、体の右側、横隔膜のすぐ下に位置しています。これらの臓器に炎症や腫瘍ができると、その刺激が横隔膜を支配する神経(横隔神経)を介して、同じ神経が分布している右肩に、痛みとして感じられることがあるのです。例えば、「胆石症」や「胆のう炎」は、脂っこい食事を摂った後などに、みぞおちから右脇腹にかけての激痛と共に、右肩に痛みが放散することがあります。「肝炎」や、進行した「肝臓がん」も、持続的な右肩の鈍痛の原因となり得ます。また、肺の病気も、右肩の痛みを引き起こすことがあります。特に、肺の最も上部(肺尖部)にできた「肺がん」は、肩や腕の神経を巻き込み、激しい痛みやしびれの原因となることがあります(パンコースト腫瘍)。さらに、心臓の病気である狭心症や心筋梗塞の痛みは、通常、左肩や左腕に放散することが多いですが、稀に右肩に痛みとして現れることもあります。これらの内臓由来の痛みは、肩を動かしても痛みが変わらない、安静にしていても痛む、そして、発熱や黄疸、体重減少、食欲不振といった、全身症状を伴うことが多いのが特徴です。もし、あなたの右肩の痛みが、このような性質を持つ場合は、整形外科だけでなく、「内科」、特に「消化器内科」や「呼吸器内科」の受診を、至急検討する必要があります。
その右肩の痛み、もしかして内臓の病気かも?