懸命な努力の末、糖尿病予備軍を脱出し、血糖値が正常範囲に戻った時の喜びはひとしおでしょう。大きな目標を達成した安堵感から、少し気が緩んでしまうのも無理はありません。しかし、ここで絶対に忘れてはならないのは、「治った」状態は、改善した生活習慣によって支えられているということです。元の不摂生な生活に戻ってしまえば、血糖値は再び上昇し、以前よりも短い期間で本格的な糖尿病へと進んでしまうリスクさえあります。予備軍からの脱出はゴールではなく、健康な生活を続けるための新たなスタートラインなのです。では、正常値に戻った後、どのようなことを心がければ良いのでしょうか。まず大切なのは、せっかく身につけた健康的な生活習慣を、特別なことではなく「当たり前」の日常として継続することです。野菜から食べる食事の順番や、適度な運動を、無理のない範囲で続けていきましょう。「あれもダメ、これもダメ」と厳しく制限しすぎると長続きしません。時には好きなものを楽しむ日を設けるなど、うまくバランスを取りながら、継続可能なスタイルを見つけることが重要です。次に、定期的な健康診断を必ず受けること。自分の血糖値の状態を定期的にチェックすることで、小さな変化にも気づくことができ、万が一数値が悪化傾向にあっても早期に対処できます。体重測定を習慣にするのも良い方法です。体重は生活習慣の乱れを反映する分かりやすいバロメーターであり、自己管理の意識を高めてくれます。そして何より、予備軍と診断された時の不安な気持ちと、それを乗り越えた時の達成感を忘れないでください。あの時に誓った健康への決意を胸に刻んでおくことが、油断や気の緩みを防ぐ一番の心の支えになります。健康は一度手に入れたら終わりではありません。日々の地道な努力で維持していく、生涯をかけた大切な財産なのです。