一度きりの激しいめまいではなく、数ヶ月、あるいは数年にわたって、何度も、めまいと吐き気の発作を繰り返している。そして、その発作の時には、決まって耳鳴りや難聴、耳が詰まったような感じもする。もし、あなたがこのような症状に悩まされているのであれば、それは「メニエール病」のサインかもしれません。メニエール病は、内耳がリンパ液で「水ぶくれ(内リンパ水腫)」の状態になってしまうことで、めまいと聴覚症状の発作を繰り返す、進行性の病気です。その原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレスや過労、睡眠不足、気圧の変化などが、発作の引き金になると考えられています。メニエール病の発作は、前触れもなく、突然始まります。まず、片側の耳に「キーン」というような高い音の耳鳴りや、耳が水で詰まったような閉塞感が現れ、聴力も低下します。そして、それに続いて、自分や周りがぐるぐると激しく回転する「回転性めまい」と、強烈な「吐き気・嘔吐」が襲ってきます。この発作は、数十分から、長い場合は半日以上も続くことがあります。発作が治まると、聴力も一旦は回復しますが、発作を何度も繰り返すうちに、聴力は徐々に低下していき、最終的には高度な難聴に至る可能性もある、非常に厄介な病気です。診断は、これらの特徴的な症状の繰り返しを確認することに加え、聴力検査や、体のバランスを調べる平衡機能検査などを行って、総合的に判断されます。専門の診療科は、もちろん「耳鼻咽喉科」です。治療は、まず、発作が起きている急性期には、めまいや吐き気を抑える薬や、ステロイド薬などを用いて、つらい症状を緩和します。そして、発作を予防するための、維持期の治療が非常に重要になります。内耳のリンパ液の圧力を下げるための利尿薬や、内耳の血流を改善する薬などが、長期的に処方されます。しかし、薬物療法以上に大切なのが、「生活習慣の改善」です。メニエール病は、「ストレス病」とも言われるほど、心身のコンディションに大きく左右されます。十分な睡眠をとり、過労を避け、ストレスを上手に発散すること。そして、塩分を控えた、バランスの良い食事を心がけること。これらの地道な努力が、発作の頻度を減らし、病気の進行を食い止めるための、最も根本的な治療となるのです。
繰り返すめまいと吐き気、メニエール病の可能性