糖尿病予備軍と診断された方が、食事改善と共にもう一つ取り組むべき重要な柱が「運動」です。運動には、血糖値を下げるための二つの大きな効果があります。一つは、運動すること自体が血液中のブドウ糖をエネルギーとして消費し、直接的に血糖値を下げる効果。もう一つは、運動を継続することで筋肉量が増え、インスリンの働きが良くなる、つまり血糖値が上がりにくい体質へと改善していく効果です。しかし、そうは言っても、これまで運動習慣のなかった人が急に運動を始めるのはハードルが高いと感じるかもしれません。大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。無理なく、そして楽しく続けられることを見つけるのが、予備軍脱出への一番の近道です。最も手軽で効果的なのが「ウォーキング」です。特別な道具も場所も必要なく、思い立ったらいつでも始められます。目標は一日合計で30分程度。一度にまとめて歩けなくても、10分を3回に分けるなど、こま切れでも効果はあります。特に、食後30分から1時間後のタイミングで歩くと、食事で上がった血糖値を効率良く下げることができるためおすすめです。通勤時に一駅手前で降りて歩く、昼休みに会社の周りを散歩するなど、日常生活の中に組み込む工夫をしてみましょう。ウォーキングに慣れてきたら、少し早歩きを取り入れたり、軽いジョギングやサイクリングに挑戦したりするのも良いでしょう。また、有酸素運動と合わせて、自宅でできる簡単な筋力トレーニング、例えばスクワットなどを加えるとさらに効果的です。筋肉は体の中で最も多くのブドウ糖を消費する場所だからです。何よりも重要なのは「継続」です。今日は疲れているから休む、雨が降っているからやらない、と決めても構いません。三日坊主になっても、また四日目から始めれば良いのです。そのくらいの気楽さで、運動を生活の一部にしていくことが、血糖値の改善、そして未来の健康へと繋がっていきます。