統計的に、痔に悩む人の割合は、男性よりも女性の方が多いと言われています。特に、若い世代ではその差が顕著です。なぜ、女性は痔になりやすいのでしょうか。その背景には、女性特有のライフステージの変化と、身体的な特徴が深く関わっています。女性が痔を発症する最大のきっかけとなるのが、「妊娠・出産」です。妊娠中は、女性の体に劇的な変化が起こります。まず、大きくなった子宮が、骨盤内の血管を圧迫し、肛門周辺の血流が悪くなります(うっ血)。これにより、いぼ痔(痔核)が非常にできやすい状態になります。また、妊娠中は、ホルモンの影響や、大きくなった子宮による腸の圧迫で、「便秘」になりやすくなります。硬い便を排出しようと強くいきむことは、肛門に大きな負担をかけ、切れ痔(裂肛)や、いぼ痔の脱出を引き起こす直接的な原因となります。そして、出産時には、分娩時の強烈ないきみによって、肛門に最大級の圧力がかかります。この時に、一気にいぼ痔が悪化したり、肛門が切れてしまったりする女性は、決して少なくありません。産後も、授乳による水分不足や、会陰切開の傷の痛みで排便を我慢してしまうことから、便秘が悪化し、痔の症状が長引くことがあります。また、妊娠・出産を経験していなくても、女性は男性に比べて、元々「便秘」になりやすい傾向があります。これは、月経前に分泌される黄体ホルモンが、腸の動きを鈍くさせる作用を持つためです。ダイエットによる食事量の減少や、外出先でトイレを我慢しがちな習慣も、便秘を助長し、痔のリスクを高めます。さらに、体の「冷え」も、肛門周辺の血行を悪化させ、痔の誘因となります。筋肉量が少なく、冷え性の女性が多いことも、痔になりやすい一因と言えるでしょう。このように、女性の痔は、ホルモンバランスの変化、便秘、そして妊娠・出産という、女性ならではの要因が複雑に絡み合って発症します。恥ずかしがらずに、早めに肛門科を受診し、適切なケアを受けることが、快適な毎日を取り戻すための第一歩です。
女性に痔が多いのはなぜ?妊娠・出産と便秘が鍵