「糖尿病予備軍」という言葉は、どこか少し安心感を与えてしまう響きがあるかもしれません。「まだ病気じゃない」「本格的な糖尿病ではないのだから大丈夫」と、つい対策を後回しにしてしまう人もいます。しかし、それは非常に危険な考え方です。糖尿病予備軍は、体が発している最後の警告であり、これを無視して放置することは、自ら深刻な健康リスクを招き入れることに他なりません。予備軍の状態を放置した場合、その先にあるのは本格的な「2型糖尿病」への移行です。一度糖尿病と診断されると、食事や運動療法に加えて、薬物療法が必要になるケースがほとんどです。血糖値をコントロールするための薬を毎日飲み続けなければならず、人によってはインスリン注射が欠かせない生活になります。これは、経済的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいものです。しかし、本当に恐ろしいのは、糖尿病そのものよりも、それに伴って引き起こされる「合併症」です。高血糖の状態が長く続くと、全身の血管がダメージを受け、様々な臓器に深刻な障害が現れます。代表的な合併症には、失明の原因となる「糖尿病網膜症」、人工透析が必要になる「糖尿病腎症」、足の切断にも繋がりかねない「糖尿病神経障害」の三つがあります。これらは生活の質を著しく低下させるだけでなく、命に関わることもあります。さらに、高血糖は動脈硬化を促進するため、心筋梗塞や脳梗塞といった、突然死のリスクがある病気の発症率も格段に高めます。糖尿病予備軍の段階で生活習慣を改善し、血糖値を正常に戻すことができれば、これらの恐ろしい合併症のリスクを大幅に減らすことができます。予備軍という言葉の裏に隠された本当の怖さを理解し、先延ばしにせず、今日から行動を起こすことが、あなたの未来の健康を守るために何よりも重要なのです。
糖尿病予備軍を放置する本当の怖さとは