お尻からの出血、排便時の痛み、あるいは、肛門のあたりにできた、気になるできもの。これらの症状は、多くの人が一度は経験するかもしれない「痔」の典型的なサインです。しかし、その悩みのデリケートさゆえに、「病院へ行くのは恥ずかしい」「どの診療科へ行けば良いのかわからない」と、一人で抱え込み、受診をためらってしまう方が非常に多いのが実情です。この、誰にも相談しにくいお尻の悩み。勇気を出して病院へ行こうと決めた時、最初に選ぶべき専門の診療科は、「肛門科(こうもんか)」あるいは「肛門外科」です。肛門科は、その名の通り、肛門とその周辺の病気(痔核、裂肛、痔瘻など)を専門に診断・治療するエキスパートです。肛門科医は、肛門の構造や機能について深い知識を持ち、専用の器具(肛門鏡など)を用いて、患部の状態を正確に診察します。そして、症状の程度や種類に応じて、薬物療法(軟膏、坐薬、内服薬)、生活習慣の指導、あるいは日帰り手術や入院手術といった、幅広い治療の選択肢の中から、患者さん一人ひとりに最も適した方法を提案してくれます。しかし、近所に「肛門科」という看板を掲げたクリニックがない場合も多いでしょう。その場合は、「消化器外科」あるいは「一般外科」を受診するのが一般的です。これらの外科でも、多くの場合、痔の診察や治療を行っています。また、消化器系の病気を広く扱う「消化器内科」や「胃腸科」でも、初期の相談や、比較的軽い痔の薬物療法に対応してくれることがあります。重要なのは、自己判断で市販薬を使い続けたり、症状を放置したりしないことです。お尻からの出血は、痔だけでなく、大腸がんや炎症性腸疾患といった、より深刻な病気のサインである可能性も否定できません。恥ずかしさを乗り越えて、専門家である医師に相談すること。それが、つらい症状から解放され、大きな病気を見逃さないための、最も確実で、賢明な第一歩となるのです。
お尻の悩み「痔」、受診すべきは一体、何科?