「痔の診察は、お尻を見せるのが恥ずかしい…」。この一点が、多くの人を病院から遠ざけている最大の理由でしょう。しかし、心配はいりません。現代の肛門科の診察は、患者さんの羞恥心に最大限配慮した、様々な工夫が凝らされています。その具体的な流れと配慮を知れば、きっと受診へのハードルはぐっと下がるはずです。まず、病院に入ると、問診票を渡されます。ここで、いつから、どんな症状があるのか(出血、痛み、脱出、かゆみなど)、既往歴やアレルギーの有無などを、できるだけ詳しく記入します。この問診票をもとに、診察室で医師からの詳しい質問があります。そして、いよいよ診察です。多くの肛門科クリニックでは、プライバシーが守られた、専用の診察室や処置室が用意されています。診察台は、カーテンで仕切られており、医師や看護師と直接顔を合わせることなく、診察を受けることができます。服装は、下着を少しずらすだけで済むように、ズボンやスカートを膝まで下げる程度です。診察の体位は、横向きに寝て、エビのように膝を軽く抱える「シムス位」という姿勢が一般的です。この姿勢は、お尻が医師の方を向くだけで、他の部分はタオルなどで覆われるため、羞恥心が最も少ない体位とされています。医師は、まず目で見て、肛門の周りの状態(外痔核や皮膚のただれの有無など)を観察する「視診」を行います。次に、潤滑ゼリーをつけた指を、そっと肛門に挿入し、内部の状態や、筋肉の締まり具合などを確認する「指診」を行います。痛みがある場合は、無理に行わないので、遠慮なく伝えましょう。そして、診断を確定させるために、最も重要なのが「肛門鏡検査」です。これは、長さ七~八センチほどの、プラスチック製の筒状の器具(肛門鏡)を肛門に挿入し、内痔核など、直腸下部の状態を直接観察する検査です。これも、数分で終わり、強い痛みはありません。これらの診察は、全て合わせても五分から十分程度です。医師や看護師は、毎日何人もの患者さんの診察を行っているプロフェッショナルです。あなたのことを、特別視したり、笑ったりすることは絶対にありません。むしろ、勇気を出して来てくれたことに、敬意を払ってくれるはずです。恥ずかしさという一時の感情のために、つらい症状を我慢し続ける必要はないのです。
恥ずかしくない!肛門科の診察、その流れと配慮