発熱と発疹の症状で医療機関を受診する際、医師から必ずと言っていいほど尋ねられる質問があります。それは「最近、新しく飲み始めたお薬はありませんか」というものです。これは、「薬疹(やくしん)」の可能性を念頭に置いた質問です。薬疹とは、治療のために使用した医薬品が原因となって引き起こされるアレルギー反応の一種で、その症状として皮膚に発疹が現れます。薬疹と聞くと、多くの人は強いかゆみを伴うじんましんのようなものを想像するかもしれませんが、実際には多種多様な形態をとります。そして、かゆみがほとんど、あるいは全くないタイプの薬疹も決して珍しくありません。麻疹や風疹に似た赤い斑点状の発疹が全身に広がる「麻疹様紅斑型薬疹」などがその代表例です。薬疹の難しい点は、薬を飲み始めてすぐに症状が出るとは限らないことです。原因となる薬を服用し始めてから数日後、場合によっては2週間以上経過してから発症することもあります。そのため、患者さん自身が発疹と薬を結びつけて考えにくいのです。風邪をひいて抗菌薬や解熱鎮痛薬を飲み始め、数日後に熱は下がったものの、今度は発疹が出てきた、というようなケースは典型的なパターンの一つです。この場合、元の風邪による発疹なのか、それとも服用した薬による薬疹なのかを慎重に判断する必要があります。原因となりうる薬は、抗菌薬、解熱鎮痛薬、てんかんの薬、高血圧の薬など、非常に多岐にわたります。もし、発熱と発疹の症状があり、何らかの薬を服用中であれば、自己判断で服用を中止したりせず、必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。受診の際には、現在服用中の薬はもちろん、市販薬やサプリメントも含めて、使用しているもの全てを医師に伝えることが極めて重要です。お薬手帳を持参することは、迅速で正確な診断への大きな助けとなります。
その発疹は薬が原因?かゆみのない薬疹の可能性