糖尿病予備軍からの脱出を目指す時、多くの人がまず意識するのは「食事」と「運動」でしょう。もちろん、これらは血糖コントロールの基本であり、最も重要な要素です。しかし、実はもう一つ、見過ごされがちでありながら非常に大きな影響を与える要素があります。それが「ストレス」と「睡眠」です。私たちの体は、強いストレスを感じると、それに対抗するためにコルチゾールやアドレナリンといったホルモンを分泌します。これらのホルモンには、血糖値を上昇させる作用があるのです。一時的なストレスであれば問題ありませんが、仕事や人間関係などで慢性的なストレスに晒され続けると、血糖値が高い状態が続きやすくなり、インスリンの働きも悪くなってしまいます。つまり、いくら食事に気をつけていても、強いストレスがその効果を打ち消してしまう可能性があるのです。ストレスを完全になくすことは難しいですが、自分なりの解消法を見つけることが大切です。趣味に没頭する時間を作ったり、友人と話したり、ゆっくりお風呂に浸かったりするだけでも心身はリラックスします。また、ストレスと密接に関係しているのが「睡眠」です。睡眠不足は、食欲を増進させるホルモンを増やし、満腹感を得るホルモンを減らすことが分かっています。その結果、食べ過ぎに繋がりやすくなるだけでなく、睡眠不足自体がインスリンの効きを悪くし、血糖値を上げやすくします。理想的なのは、毎日7時間程度の質の良い睡眠を確保することです。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、寝室を快適な環境に整えるなど、安眠のための工夫をしてみましょう。食事や運動といった直接的なアプローチに加え、ストレス管理や睡眠改善といった生活全体の質を高める視点を持つこと。それが、糖尿病予備軍から抜け出すための、隠れた、しかし強力な鍵となるのです。