大人が発熱と共に発疹を経験する場合、その多くはウイルス感染が原因です。ウイルスが体内に侵入し、増殖する過程で免疫系が反応し、その結果として発熱や発疹といった症状が現れるのです。かゆみを伴わない発疹を引き起こす代表的なウイルス性疾患には、いくつかの種類があります。まず考えられるのが「麻疹(はしか)」や「風疹(三日ばしか)」です。これらは子どもの病気というイメージが強いですが、ワクチン未接種であったり、抗体が低下したりしている大人が感染すると、子どもより重症化する傾向があります。麻疹は高熱と共に、顔から全身へと広がる融合性の赤い発疹が特徴で、コプリック斑と呼ばれる口の中の白い斑点も診断の手がかりとなります。風疹は、比較的低い熱と、耳の後ろや首のリンパ節の腫れ、そしてピンク色の細かい発疹が全身に現れます。これらの疾患は感染力が非常に強いため、疑わしい場合は必ず事前に医療機関に連絡し、指示を仰ぐ必要があります。また、「伝染性単核球症」という、主にEBウイルスによって引き起こされる病気も原因の一つです。これは「キス病」とも呼ばれ、唾液を介して感染します。喉の強い痛みや高熱、首のリンパ節の腫れが主な症状ですが、全身に様々なタイプの発疹が出ることがあります。特に、この病気の際に特定の抗菌薬を服用すると、高い確率で薬疹様の皮疹が出現することが知られています。その他にも、突発性発疹の原因であるヒトヘルペスウイルス6型や、エンテロウイルス、アデノウイルスなど、多くのウイルスがかゆみを伴わない発疹の原因となり得ます。これらのウイルス性発疹症は、特効薬がなく対症療法が中心となりますが、正確な診断を受けることで、適切な療養方法の指導を受けたり、周囲への感染拡大を防いだりすることができます。