生まれたばかりの赤ちゃんは、母親から胎盤や母乳を通じて免疫グロブリンという抗体を受け取り、様々な病気から守られています。この移行免疫のおかげで、生後半年くらいまでの赤ちゃんは、比較的感染症にかかりにくいと言われています。しかし、この母親由来の免疫も万能ではなく、徐々に減少していきます。手足口病に関しても、母親が過去に感染したことのある型のウイルスに対しては、ある程度の抵抗力を持っている可能性がありますが、母親が免疫を持っていない型のウイルスに対しては無防備です。特に、上にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいる家庭では、保育園や幼稚園からウイルスが持ち込まれるリスクが高まります。赤ちゃん、特に月齢の低い新生児や乳児が手足口病にかかると、哺乳力が低下したり、脱水症状を起こしやすかったりと、注意深い観察が必要です。まれに髄膜炎や脳炎といった重篤な合併症を引き起こすこともあるため、感染させないための対策が何よりも重要になります。赤ちゃん自身が免疫を獲得するまでの間、家族がウイルスの侵入を防ぐ「免疫の防波堤」となる必要があります。具体的には、まず上の子の健康管理を徹底することです。流行シーズンには、帰宅後の手洗い、うがいを習慣づけ、体調に変化がないか注意深く見守ります。もし上の子が感染してしまった場合は、できる限り赤ちゃんと接触させないように生活空間を分ける工夫が求められます。また、おむつ交換の際には、便の中に排出されたウイルスに触れないよう、使い捨て手袋を使用し、処理後は念入りに手を洗うことが不可欠です。看病する大人も、自身が感染の媒介者にならないよう、マスクの着用やこまめな手指消毒を徹底します。家族全員で正しい知識を持ち、一丸となって予防に取り組むことで、最も無防備な赤ちゃんをウイルスの脅威から守ることができるのです。
赤ちゃんをウイルスから守る。家族で築く免疫の防波堤