手足口病に関して、保護者の間では様々な情報が飛び交います。「一度かかればもうかからない」「大人がかかると大変らしい」といった話はよく耳にしますが、その中には誤解に基づいたものも少なくありません。特に免疫に関する疑問は多く、一度獲得した免疫がどのくらい持続するのか、本当に一生ものなのかという点は、多くの人が気になるところでしょう。感染症の専門家によると、手足口病の免疫の考え方は少し複雑です。まず大前提として、手足口病の原因ウイルスは複数存在します。ある特定の型のウイルス、例えばコクサッキーウイルスA6型に感染した場合、このA6型に対する免疫は、獲得後かなり長期間、場合によっては生涯にわたって持続すると考えられています。つまり、A6型に対しては「免疫が永続する」と言っても良いかもしれません。しかし、これはあくまでA6型に限った話です。手足口病の原因となるウイルスは他にもたくさんあり、別の型のウイルス、例えばエンテロウイルス71型には、その免疫は全く効果がありません。したがって、「手足口病そのものに対する免疫が永続する」という表現は正しくないのです。巷で「手足口病に二度かかった」という話がよく聞かれるのは、このためです。一度目と二度目では、異なる型のウイルスに感染しているケースがほとんどなのです。また、加齢とともに免疫力が低下することで、過去に感染した型のウイルスに再び感染する可能性もゼロではありませんが、これは比較的稀なケースとされています。結論として、特定のウイルス型に対する免疫は長く続くものの、手足口病という病気全体から完全に卒業できるわけではない、と理解するのが最も正確です。この事実を念頭に置き、油断することなく予防策を続けることが大切です。