大人の発熱と発疹の原因として、ウイルス感染や薬疹がよく知られていますが、見過ごしてはならないのが「細菌感染」によるものです。ウイルス感染症とは異なり、細菌感染症の多くは抗菌薬(抗生物質)による治療が有効であり、早期に診断して適切な治療を開始することが重症化を防ぐ鍵となります。かゆみを伴わない発疹と発熱を引き起こす代表的な細菌感染症の一つに、「溶連菌感染症」があります。正式にはA群β溶血性レンサ球菌という細菌による感染症で、主に喉の痛みや高熱が特徴ですが、時に「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼ばれる全身性の発疹を伴うことがあります。この発疹は、細かい点状の赤い発疹が密集して現れ、触ると紙やすりのようにザラザラしているのが特徴です。主に体や首、手足に見られますが、かゆみは軽いか、全くない場合が多いです。治療が遅れると、急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった深刻な合併症を引き起こすリスクがあるため、迅速な診断と抗菌薬治療が不可欠です。また、自然界に潜む細菌が原因となるケースもあります。例えば、ダニの一種であるツツガムシに刺されることで感染する「つつが虫病」や、マダニに刺されることで感染する「日本紅斑熱」などのリケッチア感染症です。これらの病気では、高熱とともに体幹部を中心に赤い発疹が現れます。特徴的なのは、ダニの「刺し口」が見つかることで、これが診断の重要な手がかりとなります。これらの感染症は、山林や草むら、畑仕事など、自然環境での活動後に発症することが多いです。もし、そのような活動歴の後に原因不明の発熱と発疹が出た場合は、必ずそのことを医師に伝える必要があります。これらの細菌感染症は、時に重篤な経過をたどることもあります。ウイルス感染と決めつけず、細菌感染の可能性も視野に入れて医療機関を受診することが大切です。