夫が健康診断で糖尿病予備軍だと告げられたのは、彼が50歳を目前にした年の秋でした。毎日仕事で忙しく、付き合いの飲み会も多い。帰宅はいつも深夜で、夕食は好きな揚げ物やラーメンが中心。そんな生活を長年続けてきた結果でした。診断直後、夫はひどく落ち込んでいました。好きなものを食べられなくなる、一生このままなのかと、先の見えない不安に苛まれているようでした。そんな彼を見て、私にできることは何だろうと考えました。彼一人が頑張るのではなく、家族で一緒に取り組もうと決めたのです。まず、食事メニューを根本から見直しました。野菜をたっぷり使った和食中心の献立にし、揚げ物の代わりに焼き魚や蒸し料理を増やしました。夫が物足りなさを感じないように、出汁をしっかり効かせたり、香辛料を上手く使ったりと、満足感を得られる工夫を凝らしました。お弁当も、彩り豊かで見ても楽しいものになるよう心がけました。また、運動不足を解消するため、毎週末に二人でウォーキングを始めました。最初は渋々だった夫も、季節の移り変わりを感じながら歩くうちに、次第にその時間を楽しむようになっていきました。何より大きかったのは、会話の時間が増えたことです。「今日の食事、美味しかったよ」「体重が少し減ったんだ」といった些細な報告が、彼のモチベーション維持に繋がっているのが分かりました。半年後、夫の血糖値は見事に正常範囲に戻りました。それは彼自身の努力の賜物ですが、隣で一緒に悩み、励まし、支え続けた日々があったからこそ成し遂げられたのだと信じています。糖尿病予備軍との闘いは、時に孤独なものです。しかし、家族という一番身近なサポーターの存在が、何よりの力になるのです。