喉の違和感を訴えて来院する患者さんは後を絶ちません。しかし、その原因は多岐にわたり、適切な診療科にたどり着くまでに時間がかかってしまうケースも散見されます。ここでは、いくつかの典型的な事例をもとに、どの診療科を受診すべきかの判断基準を考えてみましょう。まず、40代の男性Aさんのケースです。彼は数週間前から喉の奥に何かが引っかかるような感覚があり、時々声がかすれることもありました。長年の喫煙習慣があり、お酒もよく飲むため、本人はがんを心配していました。彼がまず向かうべきは、間違いなく耳鼻咽喉科です。喉頭がんや咽頭がんのリスク因子があり、声がれという具体的な症状も伴っているため、ファイバースコープによる喉の直接的な観察が必須となります。次に、20代の女性Bさんの事例。彼女はデスクワーク中心で、最近仕事のストレスが強く、食事も不規則になりがちでした。症状は、喉の圧迫感と、時折こみ上げてくる酸っぱい感覚(呑酸)です。この場合、耳鼻咽喉科で異常がないことを確認した上で、消化器内科の受診を検討するのが良いでしょう。ストレスや不規則な食生活は逆流性食道炎の典型的な誘因であり、呑酸という症状は強力な手がかりとなります。最後に、30代の主婦Cさんのケース。彼女は1ヶ月ほど前から喉に球が詰まったような感覚に悩まされていました。しかし、食事を飲み込む時には全く支障がなく、むしろ食事中は症状を忘れていることが多いと言います。耳鼻咽喉科の検査では異常なし。特にストレスを自覚しているわけではありませんが、子育ての疲れを感じています。このようなケースでは、心因性の「咽喉頭異常感症(ヒステリー球)」が疑われます。耳鼻咽喉科医からその可能性を説明され、生活習慣の改善やリラックスを心がけることで症状が軽快することが多いですが、改善しない場合は心療内科や精神科への相談も選択肢となります。このように、喉の違和感という一つの症状でも、それに付随する他の症状や生活背景、リスク因子を総合的に見ることで、より適切な診療科を推測することが可能です。自分の状態を客観的に観察することが、正しい病院選びの第一歩なのです。
事例から学ぶ。喉の違和感で受診すべき科の見分け方