肺炎といえば、高熱、激しい咳、色のついた痰といった、派手な症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、中には、37度台の微熱がだらだらと続き、咳は出るものの空咳(からぜき)で、痰もほとんど絡まない、というタイプの肺炎が存在します。これが「非定型肺炎(ひていけいはいえん)」と呼ばれるもので、特に若い世代や、比較的体力のある成人に多く見られます。非定型肺炎は、一般的な肺炎(定型肺炎)の原因となる肺炎球菌などとは異なる、マイコプラズマやクラミジアといった、少し特殊な微生物によって引き起こされます。これらの微生物は、細胞壁を持たないなどの特徴から、通常の肺炎治療で使われるペニシリン系の抗生物質が効きにくいという厄介な性質を持っています。症状が、風邪や気管支炎と非常に似ているため、「長引く風邪だと思っていたら、実は肺炎だった」というケースが後を絶ちません。典型的な症状は、しつこく続く乾いた咳と、37.5度前後の微熱です。高熱が出ないため、本人も「ちょっと体調が悪いだけ」と軽く考えがちで、仕事や学校を休まずに無理をしてしまうことも少なくありません。しかし、咳は非常に頑固で、夜間や早朝にひどくなる傾向があり、咳き込みすぎて眠れない、胸が痛むといった症状が出ることもあります。また、全身の倦怠感や頭痛、筋肉痛といった、インフルエンザに似た全身症状を伴うことも特徴です。非定型肺炎は、健康な若者であれば、自然に治癒することもありますが、治療が遅れると、症状が長引いたり、重症化して呼吸困難に陥ったりする可能性もゼロではありません。また、感染力が強く、家庭内や学校、職場で集団感染を引き起こすこともあります。「ただの風邪」と自己判断せず、2週間以上続く乾いた咳や、すっきりしない微熱があれば、それは体からの重要なサインかもしれません。必ず内科や呼吸器内科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
肺炎で微熱だけ?見逃しがちな「非定型肺炎」のサイン