顔は、他人からの視線が最も集まる場所です。そのため、顔に粉瘤ができてしまった場合、その治療において「いかに傷跡を目立たなくするか」は、非常に重要な課題となります。幸い、近年の医療技術の進歩により、顔の粉瘤に対しても、傷跡を最小限に抑えるための様々な工夫や治療法が選択できるようになっています。顔の粉瘤治療で、まず相談すべき診療科は「形成外科」です。形成外科医は、体の表面の機能と見た目を、より正常に、より美しく再建することを専門としています。そのため、粉瘤の摘出手術においても、皮膚のシワの方向(皮膚割線)に沿って切開したり、極細の糸を用いて特殊な縫い方(真皮縫合など)をしたりと、傷跡が将来的に最も目立たなくなるような、専門的な技術を駆使してくれます。治療法の選択においても、傷跡を考慮した方法が提案されます。比較的小さな粉瘤(直径1~2センチ程度まで)で、炎症を起こしていないものであれば、「くり抜き法(へそ抜き法)」が非常に有効な選択肢となります。これは、粉瘤の中心に直径数ミリの小さな円形の穴を開け、そこから内容物と袋を抜き取る方法です。皮膚切開が最小限で済むため、術後の傷跡はニキビ跡のように小さく、ほとんど目立たなくなります。大きな粉瘤や、過去に炎症を繰り返して周囲と癒着しているような場合は、袋を確実に取り除くために、ある程度の長さの切開が必要な「切除法」が選択されますが、この場合も、形成外科医は、シワに隠れるような切開デザインを工夫してくれます。また、手術のタイミングも重要です。粉瘤は、炎症を起こしてしまうと、皮膚が腫れあがり、組織がもろくなるため、きれいに治すのが難しくなります。炎症が強い状態では、根治手術自体が行えず、膿を出すための切開処置しかできません。この切開創は、通常の計画的な手術創よりも、傷跡が汚く残りやすい傾向があります。したがって、顔に粉瘤ができた場合は、それが小さく、炎症を起こしていない「きれいな」うちに、早めに専門医に相談し、計画的に手術を受けることが、結果的に最も傷跡を小さくする最善の方法と言えるのです。