夏になると、暑さで食欲が湧かず、つい、そうめんや冷やし中華といった、喉越しの良い炭水化物ばかりで食事を済ませてしまいがちです。しかし、このような偏った食生活こそが、夏バテによるだるさや気持ち悪さを引き起こす大きな原因となります。夏を元気に乗り切るためには、食欲がない時でも、栄養バランスを考えた「攻めの食事」を意識することが重要です。まず、不足しがちなのが「タンパク質」です。タンパク質は、私たちの筋肉や血液、そして免疫細胞を作るための重要な材料であり、体力の維持に不可欠です。そうめんだけでは、エネルギー源となる糖質は摂れても、タンパク質が決定的に不足してしまいます。冷たい麺類を食べる際には、薬味としてネギや大葉をたっぷり加えるだけでなく、豚肉をサッと茹でた「豚しゃぶ」や、温泉卵、ツナ、豆腐などをトッピングするだけで、手軽にタンパク質を補給できます。次に、意識して摂りたいのが「ビタミンB群」です。特にビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える際に必要な栄養素で、これが不足すると、いくら食べてもエネルギーが作られず、疲労感やだるさの原因となります。ビタミンB1は、豚肉やうなぎ、大豆製品などに多く含まれています。夏バテ防止に、昔から「土用の丑の日にうなぎ」と言われるのは、非常に理にかなっているのです。また、汗とともに失われがちな「ミネラル」の補給も忘れてはなりません。梅干しや海藻類、ナッツ類などを食事に取り入れましょう。そして、食欲を増進させるための工夫も大切です。カレー粉などの「香辛料」や、お酢やレモン汁、梅干しといった「酸味」は、唾液や胃酸の分泌を促し、食欲を刺激してくれます。ミョウガやショウガ、シソといった香味野菜も、料理のアクセントになるだけでなく、胃腸の働きを助けてくれます。栄養満点の夏野菜をたっぷり使った、彩り豊かな食事を心がけること。それが、夏のつらい体調不良を吹き飛ばし、元気に過ごすための何よりのエネルギーとなるのです。