ある日突然、腰に激痛が走るぎっくり腰。あるいは、長年にわたってじわじわと続く慢性的な腰の痛み。多くの人が一生に一度は経験すると言われる腰痛ですが、いざ自分がその当事者になると、「この痛み、一体どこの病院へ行けば良いのだろう?」と、途方に暮れてしまう方は少なくありません。整体やマッサージなど、様々な選択肢が頭に浮かぶかもしれませんが、医学的な観点から言えば、腰痛で最初に受診すべき診療科は、ずばり「整形外科」です。その理由は、腰痛の圧倒的多数が、骨、関節、椎間板、筋肉、靭帯、神経といった、体の運動に関わる器官、いわゆる「運動器」のトラブルによって引き起こされているからです。そして、整形外科こそが、これらの運動器の病気を専門的に診断し、治療するエキスパートなのです。例えば、中高年に多い腰痛の原因である「変形性腰椎症」や「腰部脊柱管狭窄症」は、加齢によって腰の骨や椎間板が変形し、神経を圧迫することで起こります。また、急な動作で発症する「ぎっくり腰(急性腰痛症)」も、その多くは腰の筋肉や靭帯の損傷です。若者に多い「腰椎椎間板ヘルニア」も、椎間板というクッションが飛び出して神経に触れる病気です。これらはすべて、整形外科が専門とする領域です。整形外科を受診する最大のメリットは、レントゲンやMRI、CTといった画像診断装置を用いて、腰の内部で何が起きているのかを客観的に評価できる点にあります。医師は、これらの画像から得られる情報と、問診や丁寧な身体診察の結果を総合的に判断し、痛みの根本原因を科学的根拠に基づいて診断します。原因が特定できれば、それに応じた適切な治療へと進むことができます。まずは運動器の専門家である整形外科で、自分の腰の状態を正確に把握すること。それが、つらい腰痛から解放されるための、最も確実で安心な第一歩と言えるでしょう。
腰痛になったらまず整形外科へ行くべき理由