腰痛で整形外科を受診し、レントゲンやMRIの検査を受けた結果、「骨や椎間板に特に大きな異常はありませんね」と言われることがあります。これは、重篤な運動器の病気がないという意味では安心できる言葉ですが、現に痛みで苦しんでいる本人にとっては、原因がはっきりせず、かえって不安が募る状況かもしれません。実は、腰痛の原因は、必ずしも骨や筋肉だけとは限りません。体の奥深くにある「内臓」の病気が、関連痛として腰に痛みを引き起こしている可能性もあるのです。このような場合、整形外科以外の診療科での診察が必要になります。例えば、腰痛とともに「排尿時の痛み」「頻尿」「血尿」といった症状がある場合は、腎臓結石や尿管結石、あるいは腎盂腎炎といった、泌尿器科系の病気が疑われます。特に、左右どちらかの腰から脇腹にかけて、突然、転げ回るような激痛が走る場合は、尿路結石の可能性が非常に高いと言えます。また、背中から腰にかけての鈍い痛みに加え、「腹痛」「吐き気」「下痢」などの消化器症状を伴う場合は、膵炎や十二指腸潰瘍など、消化器内科で扱う病気が隠れていることもあります。女性の場合は、婦人科系の病気も腰痛の重要な原因となり得ます。「月経のたびに腰痛がひどくなる」「不正出血がある」といった症状があれば、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣の病気などが考えられます。これらの病気では、骨盤内の炎症や、大きくなった子宮・卵巣が周囲の神経を圧迫することで、腰に痛みが生じるのです。さらに、非常に稀ではありますが、お腹の大動脈にこぶができる「腹部大動脈瘤」が、破裂しそうになることで、腰に引き裂かれるような激痛をもたらすこともあります。これは、血管外科で扱う、命に関わる緊急疾患です。このように、腰痛は全身からのSOSサインである可能性があります。整形外科で異常がないと言われた場合や、腰痛以外の全身症状を伴う場合は、それぞれの症状に合わせた専門科を受診するという、多角的な視点を持つことが、本当の原因を見つけ出すための鍵となるのです。
その腰痛は整形外科以外の病気かもしれない