痔と診断された時、多くの人が気になるのが、「自分の痔は、薬で治るのか、それとも手術が必要なのか」ということでしょう。その判断は、痔の種類と、症状の進行度(病期)によって、大きく異なります。まず、薬物療法で十分に改善が見込めるのは、比較的症状の軽い、初期段階の痔です。例えば、「いぼ痔(内痔核)」であれば、排便時に出血するだけで、まだ脱出しない、あるいは脱出しても自然に戻る段階(Ⅰ度・Ⅱ度)であれば、保存的治療が中心となります。炎症や腫れを抑える軟膏や坐薬、出血を止める薬、そして便を柔らかくする緩下剤などを使いながら、食生活や排便習慣の改善といった、生活指導を行います。多くの場合、これらの治療で症状はコントロール可能です。「切れ痔(裂肛)」も、急性期の浅い傷であれば、軟膏や坐薬で痛みを和らげ、便通を整えることで、数日で治癒します。一方、「手術」が検討されるのは、保存的治療ではコントロールが困難な、進行した痔の場合です。いぼ痔(内痔核)で言えば、排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない(Ⅲ度)、あるいは、常に脱出したまま戻らない(Ⅳ度)といった段階になると、日常生活に大きな支障をきたすため、手術が積極的に勧められます。また、いぼ痔からの出血がひどく、貧血が進行している場合も、手術の適応となります。切れ痔(裂肛)も、何度も繰り返して慢性化し、傷が深くなって潰瘍になったり、肛門が狭くなってしまったり(肛門狭窄)した場合には、手術が必要となります。そして、「痔瘻(あな痔)」は、薬で治ることはないため、診断がついた時点で、原則として手術が唯一の根治治療となります。近年では、手術の方法も大きく進歩しています。従来のような、長期の入院が必要な手術だけでなく、日帰りで可能な、体への負担が少ない様々な術式(ALTA療法など)が登場しています。手術が必要と診断されても、過度に恐れる必要はありません。肛門科の専門医とよく相談し、自分の症状とライフスタイルに合った、最適な治療法を選択することが大切です。
痔の治療、薬で治る?手術が必要?その見極め方