私の腰痛との付き合いは、三十代前半からでした。最初は、長時間座っていると腰が重くなる、という程度の軽いものでした。しかし、ある朝、靴下を履こうと前かがみになった瞬間、腰に電気が走るような激痛が走り、その場にうずくまってしまいました。ぎっくり腰だろうと思い、近所の整形外科へ行くと、レントゲンを撮った後、「骨に異常はないから、しばらく安静に」と、湿布と痛み止めを処方されただけでした。数日間、安静にしていると、腰の激痛は少し和らぎました。しかし、代わりに現れたのが、右のお尻から太ももの裏、そしてふくらはぎにかけての、焼けるような痛みとしびれでした。座っていても、横になっていても、この「坐骨神経痛」が私を四六時中苦しめ、夜も眠れないほどでした。これはただの腰痛ではない。神経に何か起きているに違いない。そう直感した私は、整形外科ではなく、脳と脊髄、そして神経の専門家である「脳神経外科」を受診することに決めたのです。脳神経外科の医師は、私の症状を詳しく聞くと、「これはヘルニアの可能性が高いですね。MRIを撮って、神経の状態を詳しく見てみましょう」と言いました。そして、後日撮影したMRIの画像には、腰の骨の間から飛び出した椎間板が、太い神経の束を無残に圧迫している様子が、はっきりと映し出されていました。診断は「腰椎椎間板ヘルニア」。原因が画像で明確に示されたことで、私はようやく、この痛みの正体と向き合う覚悟ができました。治療は、まず神経の炎症を抑えるためのブロック注射から始まりました。数回の注射で、あれほど私を苦しめていた足の痛みとしびれは、嘘のように軽くなっていきました。その後、リハビリで体幹を鍛え、日常生活での姿勢を改善することで、今ではほとんど症状なく過ごせています。あの時、しびれというサインを頼りに、脳神経外科を選んだ私の判断は、間違っていなかったと確信しています。腰痛だけでなく、足にしびれや麻痺といった神経症状が強い場合は、整形外科と並行して、脳神経外科も選択肢の一つとして考える価値がある、と私の経験から伝えたいです。