毎年、梅雨が明けて本格的な夏が始まると、私の体には決まって異変が訪れました。朝から体が鉛のように重く、食欲は全く湧かない。そして、一日中、胃のあたりがムカムカして、乗り物酔いのような気持ち悪さが続くのです。最初は夏風邪かと思っていましたが、熱が出るわけでもなく、はっきりしない不調がだらだらと続くだけ。夏という季節が、ただただ憂鬱でした。そんな私が、ある年を境に、この夏の不調から劇的に解放されたのです。きっかけは、鍼灸師の友人から言われた一言でした。「それ、たぶん胃腸が冷え切っているんだよ。夏こそ体を温めなきゃダメだよ」。当時の私は、暑さをしのぐために、毎日冷たい麦茶をがぶ飲みし、昼食は決まって冷たいそうめんやざるそば。夜はアイスクリームを食べるのが日課でした。友人によれば、その生活こそが、私の胃腸を機能不全に陥らせている原因だというのです。半信半疑でしたが、藁にもすがる思いで、私はその日から「温活」を始めました。まず、朝一番に飲む冷たい水を、白湯に変えました。日中に飲むお茶も、常温か、温かいものを選ぶようにしました。食事も、冷たい麺類を控え、温かいスープや、ショウガやネギといった薬味をたっぷり使った料理を意識して摂るようにしました。そして、夜はシャワーで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、体の芯から温まる時間を作ったのです。最初の数日は、正直、あまり変化を感じませんでした。しかし、一週間ほど続けた頃、ふと気づいたのです。朝の目覚めが、いつもよりスッキリしていることに。そして、あれほど私を悩ませていた、あの嫌な胃のムカムカ感が、明らかに軽くなっているのです。二週間もすると、自然と食欲も湧いてきて、気持ち悪さを感じることはほとんどなくなっていました。夏の不調は、暑さのせいだと諦めていましたが、原因は自分自身の生活習慣にあったのです。体を内側から温めるという、ほんの少しの意識の変化が、私の憂鬱な夏を一変させてくれました。
私が夏の気持ち悪さから抜け出した話