医療Q&Aや掲示板、専門家とのチャット形式コラム

2025年10月
  • 冷たいものの摂りすぎが不調の原因?

    医療

    うだるような暑い日、キンキンに冷えた飲み物や、シャリシャリのかき氷は、まさに砂漠のオアシスのように感じられます。しかし、その一時的な快感が、実は夏の体調不良や気持ち悪さを引き起こす大きな原因となっているかもしれない、ということをご存知でしょうか。暑いからといって、冷たいものばかりを胃に流し込んでいると、私たちの胃腸は、知らず知らずのうちに悲鳴を上げています。私たちの内臓は、三十七度前後の温かい環境で最も活発に機能するようにできています。そこに、氷の入った冷たい飲み物やアイスクリームが大量に流れ込んでくると、胃腸は直接的に、そして急激に冷やされてしまいます。すると、胃腸の血管は収縮し、血行が悪くなります。その結果、食べ物を消化するための消化酵素の働きが鈍り、胃腸そのものの蠕動運動も低下してしまうのです。これが、「胃腸の冷え」による機能低下です。胃腸の働きが弱まると、食べたものがいつまでも胃の中に留まり、胃もたれや胸やけ、そしてムカムカとした気持ち悪さを引き起こします。また、腸の動きも悪くなるため、下痢や便秘といったお腹の不調にも繋がります。さらに、胃腸の機能低下は、栄養の吸収を妨げるため、体全体のエネルギー不足を招き、夏バテ特有の全身の倦怠感や疲労感の原因ともなるのです。この悪循環を断ち切るためには、夏の食生活を少し見直すことが大切です。もちろん、冷たいものを完全に断つ必要はありません。しかし、食事の際には、温かいスープや味噌汁を一杯添えるだけでも、胃腸の冷えを和らげることができます。飲み物も、常に氷の入ったものではなく、常温のものを意識して選んでみましょう。寝る前に、ショウガ入りの温かい紅茶などを飲むのも、体を内側から温めるのに効果的です。腹巻きなどで、お腹周りを物理的に冷やさないようにするのも良い方法です。暑い夏こそ、胃腸をいたわる「温活」を。それが、つらい不調から抜け出すための、意外な近道かもしれません。

  • その腰痛は整形外科以外の病気かもしれない

    医療

    腰痛で整形外科を受診し、レントゲンやMRIの検査を受けた結果、「骨や椎間板に特に大きな異常はありませんね」と言われることがあります。これは、重篤な運動器の病気がないという意味では安心できる言葉ですが、現に痛みで苦しんでいる本人にとっては、原因がはっきりせず、かえって不安が募る状況かもしれません。実は、腰痛の原因は、必ずしも骨や筋肉だけとは限りません。体の奥深くにある「内臓」の病気が、関連痛として腰に痛みを引き起こしている可能性もあるのです。このような場合、整形外科以外の診療科での診察が必要になります。例えば、腰痛とともに「排尿時の痛み」「頻尿」「血尿」といった症状がある場合は、腎臓結石や尿管結石、あるいは腎盂腎炎といった、泌尿器科系の病気が疑われます。特に、左右どちらかの腰から脇腹にかけて、突然、転げ回るような激痛が走る場合は、尿路結石の可能性が非常に高いと言えます。また、背中から腰にかけての鈍い痛みに加え、「腹痛」「吐き気」「下痢」などの消化器症状を伴う場合は、膵炎や十二指腸潰瘍など、消化器内科で扱う病気が隠れていることもあります。女性の場合は、婦人科系の病気も腰痛の重要な原因となり得ます。「月経のたびに腰痛がひどくなる」「不正出血がある」といった症状があれば、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣の病気などが考えられます。これらの病気では、骨盤内の炎症や、大きくなった子宮・卵巣が周囲の神経を圧迫することで、腰に痛みが生じるのです。さらに、非常に稀ではありますが、お腹の大動脈にこぶができる「腹部大動脈瘤」が、破裂しそうになることで、腰に引き裂かれるような激痛をもたらすこともあります。これは、血管外科で扱う、命に関わる緊急疾患です。このように、腰痛は全身からのSOSサインである可能性があります。整形外科で異常がないと言われた場合や、腰痛以外の全身症状を伴う場合は、それぞれの症状に合わせた専門科を受診するという、多角的な視点を持つことが、本当の原因を見つけ出すための鍵となるのです。

  • 私が夏の気持ち悪さから抜け出した話

    生活

    毎年、梅雨が明けて本格的な夏が始まると、私の体には決まって異変が訪れました。朝から体が鉛のように重く、食欲は全く湧かない。そして、一日中、胃のあたりがムカムカして、乗り物酔いのような気持ち悪さが続くのです。最初は夏風邪かと思っていましたが、熱が出るわけでもなく、はっきりしない不調がだらだらと続くだけ。夏という季節が、ただただ憂鬱でした。そんな私が、ある年を境に、この夏の不調から劇的に解放されたのです。きっかけは、鍼灸師の友人から言われた一言でした。「それ、たぶん胃腸が冷え切っているんだよ。夏こそ体を温めなきゃダメだよ」。当時の私は、暑さをしのぐために、毎日冷たい麦茶をがぶ飲みし、昼食は決まって冷たいそうめんやざるそば。夜はアイスクリームを食べるのが日課でした。友人によれば、その生活こそが、私の胃腸を機能不全に陥らせている原因だというのです。半信半疑でしたが、藁にもすがる思いで、私はその日から「温活」を始めました。まず、朝一番に飲む冷たい水を、白湯に変えました。日中に飲むお茶も、常温か、温かいものを選ぶようにしました。食事も、冷たい麺類を控え、温かいスープや、ショウガやネギといった薬味をたっぷり使った料理を意識して摂るようにしました。そして、夜はシャワーで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、体の芯から温まる時間を作ったのです。最初の数日は、正直、あまり変化を感じませんでした。しかし、一週間ほど続けた頃、ふと気づいたのです。朝の目覚めが、いつもよりスッキリしていることに。そして、あれほど私を悩ませていた、あの嫌な胃のムカムカ感が、明らかに軽くなっているのです。二週間もすると、自然と食欲も湧いてきて、気持ち悪さを感じることはほとんどなくなっていました。夏の不調は、暑さのせいだと諦めていましたが、原因は自分自身の生活習慣にあったのです。体を内側から温めるという、ほんの少しの意識の変化が、私の憂鬱な夏を一変させてくれました。

  • 腰痛で病院と整骨院はどちらへ行くべきか

    医療

    腰に痛みを感じた時、「病院へ行くべきか、それとも近所の整骨院や整体でマッサージしてもらうべきか」と、迷った経験のある方は多いでしょう。どちらも体の痛みを和らげてくれる場所という点では共通していますが、その役割と資格、そして提供できるサービスには、天と地ほどの明確な違いがあります。この違いを正しく理解しておくことは、適切な対処法を選び、腰痛をこじらせないために非常に重要です。まず、病院、特に腰痛の場合は整形外科が中心となりますが、ここは医師という国家資格を持つ専門家が「診断」と「治療」を行う医療機関です。医師は、問診や身体診察に加え、レントゲンやMRIといった科学的根拠に基づく検査を用いて、痛みの原因を医学的に特定します。そして、その診断に基づいて、薬の処方(内服薬、湿布)、注射、手術、あるいは理学療法士によるリハビリテーションといった、「医療行為」を行います。これらはすべて、医師の監督下でのみ行える専門的な介入であり、健康保険が適用されます。一方、整骨院(接骨院)や整体院は、医療機関ではありません。整骨院では、柔道整復師という国家資格を持つ専門家が「施術」を行います。彼らの専門は、骨折、脱臼、打撲、捻挫といった急性の怪我に対する応急処置や後療法です。電気治療や温熱療法、マッサージなどで痛みを和らげることはできますが、それはあくまでも対症療法であり、医師のように病気を診断したり、薬を処方したりすることは法律で禁じられています。整体院に至っては、法的な資格制度はなく、民間資格によるカイロプラクティックやリラクゼーションが中心となります。では、どちらを選ぶべきか。答えは一つです。まずは必ず病院(整形外科)を受診し、医師による正確な診断を受けることが最優先です。なぜなら、あなたの腰痛が、単なる筋肉の疲労ではなく、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、あるいは内臓の病気や悪性腫瘍といった、専門的な治療を要する重篤な病気が原因である可能性もゼロではないからです。自己判断で整骨院や整体に通い続け、こうした病気の発見が遅れることは、絶対にあってはなりません。病院で危険な病気がないと診断された上で、筋肉の緊張をほぐすなどの補助的な手段として、信頼できる施術所を利用する。この順番を、決して間違えないようにしてください。

  • ストレスが原因の腰痛に心療内科という選択

    医療

    長年にわたって、腰の重だるい痛みに悩まされている。整形外科でレントゲンやMRIを撮っても、「特に異常なし」と言われるばかり。整骨院やマッサージに通っても、その場しのぎで、すぐに痛みはぶり返す。そんな、原因不明の慢性的な腰痛に苦しんでいる方は、もしかしたら、その痛みの根源が、腰そのものではなく、「心」にあるのかもしれません。私たちの心と体は、自律神経やホルモンなどを介して、密接に連携しています。仕事や人間関係、家庭の問題など、強い精神的なストレスが長期間続くと、脳の機能に影響が及び、痛みをコントロールするシステムがうまく働かなくなることがあります。通常であれば気にならないような些細な体の信号を、脳が「痛み」として過剰に認識してしまったり、あるいは、痛みを抑制する脳内物質の分泌が低下してしまったりするのです。その結果、身体的には何の異常もないにもかかわらず、実際に強い痛みを感じ続ける、という状態に陥ります。これが、「心身症」としての腰痛です。また、ストレスは、体を常に緊張状態にする交感神経を優位にします。これにより、無意識のうちに腰周りの筋肉がこわばり、血行が悪くなります。血行不良に陥った筋肉には、発痛物質が溜まりやすくなり、これが慢性的な痛みの原因となることもあります。このようなストレス性の腰痛の場合、いくら腰に湿布を貼ったり、マッサージを受けたりしても、根本的な原因である心のストレスが解消されない限り、症状は改善しません。もし、あなたが原因不明の腰痛に悩んでおり、なおかつ、「最近よく眠れない」「気分が落ち込む」「何事にも興味がわかない」「食欲がない」といった、心の不調を同時に感じているのであれば、一度、「心療内科」や「精神科」の受診を検討してみてはいかがでしょうか。心療内科では、カウンセリングを通じてストレスの原因を探ったり、物事の受け止め方を見直す手助けをしてくれたりします。また、必要に応じて、痛みの感覚をコントロールする働きのある、抗うつ薬や抗不安薬などが処方されることもあります。心の緊張がほぐれることで、結果として体の痛みも軽快していくケースは、決して少なくありません。原因不明の痛みは、あなたの心が発しているSOSのサインかもしれません。その声に耳を傾ける勇気を持つことが、回復への第一歩となるのです。

  • 私が椎間板ヘルニアで脳神経外科を選んだ話

    医療

    私の腰痛との付き合いは、三十代前半からでした。最初は、長時間座っていると腰が重くなる、という程度の軽いものでした。しかし、ある朝、靴下を履こうと前かがみになった瞬間、腰に電気が走るような激痛が走り、その場にうずくまってしまいました。ぎっくり腰だろうと思い、近所の整形外科へ行くと、レントゲンを撮った後、「骨に異常はないから、しばらく安静に」と、湿布と痛み止めを処方されただけでした。数日間、安静にしていると、腰の激痛は少し和らぎました。しかし、代わりに現れたのが、右のお尻から太ももの裏、そしてふくらはぎにかけての、焼けるような痛みとしびれでした。座っていても、横になっていても、この「坐骨神経痛」が私を四六時中苦しめ、夜も眠れないほどでした。これはただの腰痛ではない。神経に何か起きているに違いない。そう直感した私は、整形外科ではなく、脳と脊髄、そして神経の専門家である「脳神経外科」を受診することに決めたのです。脳神経外科の医師は、私の症状を詳しく聞くと、「これはヘルニアの可能性が高いですね。MRIを撮って、神経の状態を詳しく見てみましょう」と言いました。そして、後日撮影したMRIの画像には、腰の骨の間から飛び出した椎間板が、太い神経の束を無残に圧迫している様子が、はっきりと映し出されていました。診断は「腰椎椎間板ヘルニア」。原因が画像で明確に示されたことで、私はようやく、この痛みの正体と向き合う覚悟ができました。治療は、まず神経の炎症を抑えるためのブロック注射から始まりました。数回の注射で、あれほど私を苦しめていた足の痛みとしびれは、嘘のように軽くなっていきました。その後、リハビリで体幹を鍛え、日常生活での姿勢を改善することで、今ではほとんど症状なく過ごせています。あの時、しびれというサインを頼りに、脳神経外科を選んだ私の判断は、間違っていなかったと確信しています。腰痛だけでなく、足にしびれや麻痺といった神経症状が強い場合は、整形外科と並行して、脳神経外科も選択肢の一つとして考える価値がある、と私の経験から伝えたいです。